エッフェソイヤ!

建築のバックグラウンドから、次世代の建築を作るにはどうすればいいか考えているデザイン系院生が、建築/ゲーム/XR/UXデザイン/シチュアシオニスト/バク転/カポエラ/パルクール/筋トレ/クラブカルチャーについて幅広く語ります。

AI、成長、コミュニティ...思考停止ワードに気をつけよう

今回は、気づいたら使ってしまっている、「なんか言った気になって満足してしまう言葉」について考えようと思います。
 

 
このツイートの背景を含めて、もう少し深掘りしていく記事です。
 
大学のレポートや、就活の場面、ちょっと自分の考えを述べなければならないときで、その場ですぐに自分の考えをうまく表現できない時、こういう言葉をついつい使ってしまう場合があります。
 
それを、思考停止ワードと呼ぶことにしました。
 
  
以前の記事「話のわかりやすさは、情報の解像度にある」で、思考の解像度について少し話をしましたが、思考停止ワードは、言った後にそれ以上自分の思考の解像度が上がらなくなる場合が多いです。
 それゆえ、ずっと無意識に使っていると、自分が気づかないうちに必要のない枠組みに囚われたり、存在しない問題に勝手に頭を悩ませたり、堂々巡りすることになります。
 
そういう意味で、思考停止ワードには気をつけた方が良いです。
 
まずは、よく見る思考停止ワードの例を挙げていきたいと思います。
 

思考停止ワードの例

 
 
多くの分野で共通して見られる思考停止ワード

http://2.bp.blogspot.com/-c4Zrw3j68x0/UPyI0_I3RXI/AAAAAAAAKxw/-Xbi8nmVTF8/s1600/seijika.png

効果的な・合理的な・正しい・新しい・人間らしい生活
 
例文:人間は皆、正しいことが好きで、皆正しく合理的な、人間らしい生活を送るべきだ。
 
→政治系の大御所の方とか、ちょくちょくこれに似たことを言う人いますね。
まあ、そりゃそうだけど、でこの宣言の元具体的にどうすりゃいいの…?となってしまいます。
 
 
テクノロジー系の思考停止ワード
 

http://1.bp.blogspot.com/-9c9lDlSaaEQ/Vozi3iRp5QI/AAAAAAAA2xw/4_b8WllbWss/s800/computer_big_data.png

 
データベース・可視化(見える化、ビジュアライゼーション)・AI・ビッグデータ・クリエイティブ・イノベーション
 
例文:AIにより蓄積されたビッグデータのデータベースを可視化することにより、より効果的なイノベーションをクリエイティブに促進する
 
→何かすごそうに響きますが、実際のところこれがあるサービスのコンセプトとして出てきた場合、「何かすごそう」以上に何も伝わりません。
 
AIであれば、僕も不勉強で詳しくは知りませんが、
それは機械学習なのか、生物のような振る舞いをする人工生命の文脈で語っているのか、
機械学習であれば教師あり・なし学習なのか、
ビッグデータのデータベースは、どのようにして集められ、どのように還元されるのか、
この辺りまでは少なくとも簡潔に話さないと、そもそもこの言葉の評価をすることができません。
 
 
 
大学生が使いがちな思考停止ワード

http://1.bp.blogspot.com/-e69PxLV3sf4/VVhAaRx0lbI/AAAAAAAAttk/na5YSSw05Jk/s800/ishiki_takai.png

 
 
承認欲求/自己顕示欲
→人間が自分が認められたい、という気持ちがあるのは当然なので、人がやることを全てこれで括ってしまえる。
 
大学2年生くらいの少し捻くれた人が言う「それ自己満だろ!(ドヤ顔)」という言葉も、同じように言った側が勝った気になって満足するだけで、何も前に進まない言葉です。
 
意識高い系
→シンプルに、自分が気に入らないタイプのあらゆる人を揶揄するときに使われることが多いです。その場合は、こう言った言葉に逃げずに、「何がどう気に入らないのか」を自分の言葉にして見るとより建設的だと思います。
(意外と、顔が気に入らないとか、見た目がダサいとか、自分の出していない結果を自信を持って表明しているので嫉妬しているとか、その辺りに大学生だと落ち着くことが多いです。)
 
成長・グローバル・優秀な人材
→学生を食い物にする就活エージェント系の人々が多用するワードです。
何かの形で成長していない人はいません。"成長スピード"だけを捉えるなら、赤ちゃんが一番就活では強いことになってしまいます。
仕事もグローバルではない仕事を探す方が大変です。
優秀な人材も、それを捉える人や環境により変化します。
 

このような言葉が出てきたときは「ハイレベル、優秀なビジネスマン、この人は一体何を言ってるんだろうな...?」と少し考えて見ると、不必要に踊らされずに済みます。
 
 
 
建築学生が使いがちな思考停止ワード
 
コミュニティ
豊かな空間
非日常的空間
縁側空間
境界が溶け合う
形態言語を抽出する
顕在化
 
例文1:非日常と日常の境界が溶け合うことにより生まれる、豊かな空間
→たまにお祭り騒ぎのようなことが起こりそうな場所、と言う意味です。そもそも存在するか怪しい非日常と日常という、勝手に引いた線引きを、溶かしたつもりになってしまいます。
 
例文2:建築家XXの形態言語を抽出
→ようは建築家XXの真似をしたと言うことです。どのように真似をしたか、表現か言葉で説明する必要がありますが、「ケイタイゲンゴヲチュウシュツ!」の音の小難しさに、その部分を忘れる人が大学院生でもいます。
 
 

使っている人にまずは気付こう

 
思考停止ワードは、注意深く観察していると日常の至るところで聞けます。
実は、世の中で大御所と呼ばれる人たちの話をよく聞いていると
 
「あれ、この人思考停止してない…?」
 
と思うことがよくあります。
 
大御所の方々は、自分が長年の試行錯誤の中で確立した王道のパターン、決まり文句があり、それを周りの人も認識しているので、思考停止して問題はないです。これから新しい枠組みを作る必要はないですから。
 
ただ、僕らのような20代、30代の人間がそれをやってしまうと、永遠に今考えていること以上のことは考えられなくなります。
 
 
去年の年末の朝生の議論などは、それを見つけるいいトレーニングになるかと思います。
田原さんは、最初はわからないことはわからない、と明確にし、質問を繰り返してきましたが、徐々に体力に限界が近づくにつれ、
 
「それ、いいことなのか!悪いことなのか!」
「つまり、小学校教育はいらないと言うことなのか!」
 
という思考停止状態に陥るのが、よくわかると思います。
 
 
 

どうやって思考停止ワードを避けるか

 
思考停止ワードが出てくるときは、自分の頭の体力が限界に来ている時が多いです。
その理由が肉体的疲労か、単純な勉強不足かは様々ですが、要は頭が辛くなって来たので、含みの多い言葉を使って逃げよう、と無意識な判断が加わっています。
 
マラソンで走り続けて疲れて来て、脇腹が痛くなり、スピードを緩める感覚が近いと思います。
 
なので、これは身も蓋もない辛い話なのですが、思考停止ワードを使わないようにするための本質的な解決は、徐々に自分の思考体力を、筋トレのように上げていくしか方法はないと思います。
 
その筋トレの方法としては、シンプルに、
  • 良質な情報のインプット(本以外にも、ネットの記事や動画など、様々な情報)
  • インプットした情報を、自分の言葉や表現でアウトプットしていく
この2つを繰り返すしかないと僕は考えています。
 
また、周りにたくさん「思考停止していない人」がいて、常にその人たちから厳しい指摘を受けていると、自然と思考停止しない習慣がついていきます。
 
理系の大学院は、そういう人が多いので環境としては恵まれていると思います。(思考停止すると研究が永遠に前に進まないので)
 
周りにそういう人が少ない場合は、今の時代インターネットもありますし、SNSで(マナーをわきまえた上で)色々な人に質問して見るのもいいかもしれません。
 
自分の中に、常に「いや、それってどういうこと?」と聞きまくってくる鬱陶しい理系男子を飼うイメージでやって行ってもいいと思います。
 

https://cdn0.mynvwm.com/wp-content/uploads/2016/02/af9920077037m.jpg

 
上の2つの筋トレの習慣しか方法がない、と言っても、自分が思考停止ワードを使ってしまっている、と自覚しているか、そうでないか、では、体力の伸びも大きく変わってくると思います。
 
これを意識して普段から何かしらのアウトプットをしていると、おそらく今までより言葉選びに慎重になり、一時的に口数が減っていくことが多いです。
 
この習慣、やり始めると正直めちゃくちゃ疲れます。でも、頭の筋トレですから、当然です。
 
 
 
 

時と場合によっては思考停止してもいい

 
気をつけて欲しいのは、別にいかなる時も思考停止ワードを使わないように気を張らなくてはいけない、ということではないです。
 
自分で何か真面目なアウトプットを出したい時や、何かを作る時、人に価値のある情報を伝えたい時などに気をつければいいことで、例えば同窓会の昔を懐かしむ飲み会の場で、
 
「いや、ビッグデータの定義はそもそもなんだ?インプットは?アウトプットは?機械学習は教師あり?なし?」
「お前の言う家族に囲まれる幸せ、それは思考停止ではないか?」
「総合商社に入ったこと、それが本当に優秀な人材の定義なのか?」
 
なんて議論をふっかけていたら、確実に次の飲み会は呼んでもらえません。(僕は心の中でたまに少し思ったりはしますが、そんなことを議論しても楽しくないとわかっているので、その場ではノッておいた方が得ですし、楽しいです。)
 
ただ、卒業論文を書いたり、公の場で自分の責任の元で発言したり、発表したりするときに、思考停止ワードを連発していると、思考停止している人々が自然と周りに寄ってくることになったり、気づかぬうちに堂々巡りに入ってしまって、時間が勿体無いので気をつけましょう、という話です。
 
 
思考停止せずに悩み続けること=勉強という風に定義し、勉強の方法を論じているのは、千葉雅也さんの「勉強の哲学」です。
彼の本では、勉強はキモくなることだ、と語られていますが、
 
これはまさに、飲み会で浮いてしまうような思考回路を「一旦」身につけよう、という話だと言えます。
 
もう少しこの記事の内容を深く理解して見たい方は、ぜひご一読ください。

 

勉強の哲学 来たるべきバカのために

勉強の哲学 来たるべきバカのために