エッフェソイヤ!

建築のバックグラウンドから、次世代の建築を作るにはどうすればいいか考えているデザイン系院生が、建築/ゲーム/XR/UXデザイン/シチュアシオニスト/バク転/カポエラ/パルクール/筋トレ/クラブカルチャーについて幅広く語ります。

"好きなこと"を実践に繋げる方法①: 「欲望年表」を書いてみる。

こんにちは、藤井です。
 
今回は、他のブログの記事でも、何度か「ある人の興味・関心・哲学」がこれから重要で、それに対して仕事が舞い込んでくる働き方も可能になるのではないか、と言う仮説を立てました。
これを構築して行くことは、抽象的に言うと"好きなこと"を実践に繋げる為に必要な最初のステップです。
 
なので、今回はまず僕が、自分の「興味・関心・哲学」をどうやって構築して行ったのか、また、それをかなり深いレベルで行うにはどうすればいいか、その方法の一つを記そうと思います。
そして、後々、その「興味・関心・哲学」をどうすれば自分の実践と繋げられるか、その為に自分が行っていることをまとめようと思います。
 
これは、「こうすれば絶対自分の好きなことを実践に繋げられるぜ!みんな俺の真似をしろ!」と言うよりは、自分もまだ色々ともがきながら試している中で、
自分の周りの色々とうまく行っている人の取っている行動に共通するところがあり、
「こうすれば割とうまく行くかもな?」と自分で実験している途中の記録です。
 
※この記事では、千葉雅也さんの「勉強の哲学」に登場する「欲望年表」を最初のステップとして設定しています。
 

 

勉強の哲学 来たるべきバカのために

 

勉強の哲学 来たるべきバカのために

勉強の哲学 来たるべきバカのために

 

 

 本は是非読んでいただきたいのですが、このようなブログの記事にもしっかりと内容がまとまっていますので、ここでの説明は割愛します。
 
 
千葉雅也さんの欲望年表に関する考えは、このツイートが一番まとまっています。
 
 
 
具体的にどうやって年表を作って行くか、は、実際に本を読んでもらったり、こちらのようなブログの記事がたくさんまとまっているので、それも割愛します。
 
 
 
就活をしていると”自己分析が大事!”、”自分の軸を作ろう!"と言う話がよくありますが、大枠ではそれと同じ話です。
ただ、就活系の多くのアドバイスは具体的にどうやって軸を作っていけばいいか、を説明していなく、かつ深い分析が出来ていないまま、具体的な就職先へ繋げるのが早すぎて、早い段階でその人の興味を高い解像度で分かる前に軸を作ってしまう傾向があります。それ故、数週間するとまた軸自体が変わってしまう、と言うのはよくあることだと思います。
 
ともかく、この「欲望年表」を作るプロセスをまず経ることができれば、例えば大学の卒業論文や、就職活動の「自己分析」、そして自分の普段楽しいからやっている活動もいちいち別のものとして捉える必要は無くなります。
進路も、「何やりたいか分からない...とりあえずSPIやらないと...」と言うよりは、「具体的にこれがやりたいけど、それに近いのはこっちかな?本当かどうかこの人に連絡したり、このインターンをやって確かめよう。」と言うように、生産的に悩むことができるようになると思います。
 
僕と同じように「好きなことでうまくやって行きたいけど、どうすればいいんだ...」と思っている同世代の人たち、特に”作品"を最終的には作りたいと思っている人たちの、何か参考になれば、と思います。
 
 
今回の記事では、ここまでを記します。
 
その次には、その人たちと自分の差を分析し、どうやって近づけばいいか、自分が直近で取れるステップは何か、それを構築した方法を記事にしようと思います。
 
 

 

①欲望年表を書く

 
方法は、このブログの記事などを参考にしてみてください。純粋に最後の成果物を載せます。
 
年表を書くときのポイントは”まず考えすぎないで思いついた思い出を書く"ということです。
圧倒的に主観的になって大丈夫です。そうしないと、自分のコアは出てきません。
 
そのあとに、第三者的な目線になって
「なんでこの人はこの行動が好きなんだ…?頭おかしいのかな…?」
「あ、またおんなじようなこと繰り返してる。相当好きなんだな、これ...」
というテンションで、冷静に分析をすれば大丈夫です。
 
 
1930年 ル・コルビジェによる”輝く都市”構想の提示
1950年代 高度経済成長期、小平の街がベッドタウンとして"計画"される。
1960年代 マルクス主義を元にし、資本主義的な都市空間を否定するシチュアシオニスト運動が盛り上がる
1978年 Learning from Las Vegas 出版
1990年ベルリンの壁崩壊(冷戦の終結、資本主義、西洋近代の"勝利")
1991年インターネット公開、バブル崩壊(失われた10年)
1994年2月 東京、小金井に生まれる
1994年6月 松本サリン事件
1995年 Windows95発売
1996年 ポケットモンスター赤・緑発売
飛び降りることに強い関心があった
テレビ台の上から、ジャングルジムから、アパートの階段から
→飛び降りること自体を楽しむ(ロジェ・カイヨワ”パイディア”×"イリンクス"に当たる)
4歳にしてゲームボーイのマリオに熱中
 
1999年 小平のアパートへ引っ越す。3つの違った幼稚園・保育園を経験
・最初の幼稚園を不登校に。じっとすること、ちゃんとすることが他の子供よりも苦手だった?
→時間割、整列、体操、"お遊戯”、などのカリキュラムに対する嫌悪
 ・一番楽しかったあそびは"ただ、廊下に窓から飛び降りて回る"
→上記の”目的・ルールありきのあそび"に対し、"内向的、自己目的的なあそび"に強い関心があった
飛び降り遊び、がまだ続いている。頭おかしいなこの人...
 
2001年 アメリカ同時多発テロ(リアルタイムでテレビで目にする。)
2002年 小平の一軒家へ引っ越す(オタク10)
・幼稚園を嫌ったのと同様な理由で、3~4年はしばしば学校を休んでいた
・サッカー、鬼ごっこ、ドッジボールなどの”勝ち負け"がある遊びを避けていた。
→それのカウンターとして、オリジナルの誰も"負けない”ような遊びを考え、仲間内で楽しんでいた(オタク的な趣味)
・秘密基地作りに没頭しかけるが、地元には本格的に作れる場所がどこにもないことを知る。
→幼稚園や小学校に感じたつまらなさと似たもの(幼児期の飛び降りに当たる行為ができる場所の模索)
→機能主義的、目的ありきで設計された日本の郊外の都市空間への懐疑、それに対しての介入(空間の再生産)
→アメリカのティーンはそれをスケートボードという形で実践したが、自分は木登り秘密基地作りという技術しか持ち合わせなかった。
・つまらない小平の街に半ば絶望し、ゲームの世界へのめり込む(仮想空間への逃亡)
→複数人で対戦するゲームよりも、一人で黙々とやるゲームが好きだった
・パソコンを触り始める。RPGツクールでのゲームを作り、レゴ作品のネット公開、レゴ好きとの交流(オタク性の進行)
情報技術が”生活"を豊かにすることを身を以て体験
・他の子供に遅れて、レゴブロック、プラモデルに興味を持つ
動く機械、モノの仕組みに強い関心があった。レゴで作ったものもほぼ動く機械
・卒業式では”作る人になりたい”と宣言していた
→作るモチベーションは「どうにも変えられない現実を、自分の作った空想なら好きにできる」というものだった。(ゼロ年代に顕著な、セカイ系、引きこもり系)
→消極的ニヒリズム(世の中なんて何の意味もないから、適当にやってけばいいのさ...と言う思想)
 
2006年北九州へ引っ越し、中学入学(オタク2:マッチョ8)
 ・オタク性の外的環境による破壊。
2007年 リーマンショック(家が安定していたので実感はなかった)
・高校卒業まで、周囲にオタクになれる環境がないことによる一時的な興味の変化
・”モテる”こと、”勝つ”こと、”舐められない"ことへの欲求の芽生え
・部活において"勝つ”ことが目標となった
・同時に、週末はゲームの改造、サイト巡りを楽しんだ
・英語が得意、数学が苦手であることに気づく。
 
2009年高校入学、アメフト部入部
・オタク性の対極へ。”日本一”という明確な目標、明確なカリキュラム、走り方、体型含め全てはコントロール可能である、という信念のもと、強い、完璧な人間を目指す。近代人へのラディカルな人体改造(オタク性の破壊)
→積極的ニヒリズム(人生なんて意味がないけど、ゴリゴリやってって楽しくしてくんだろが!)への転化?
 
2010年ドイツへ留学(オタク0:グローバル5:マッチョ5)
当時の興味(evernoteより)
・いろいろな現象をつなげて俯瞰的に考える(物理経済学?心理学?)
→Googleが似たようなことをしている(膨大な情報を整理)
→知的にアイロニカルであろうという姿勢が見て取れる(科学主義、すべてのものには根拠があるはずだ)
・脳科学(職業としては成り立つのか?かなり狭き門?)≒人間学
・異文化、外国語への興味→国際ジャーナリスト?
・日本人の16歳では経験し得ない欧米の自由を満喫、欧州にかぶれる。
・”ユーモア”、”あそび”の大切さに気づくが、高校で身につけた"厳密・完璧主義"の自分との板挟みに陥り、悩む。(第一次ラディカル・ラーニング)
 
2011年東日本大震災(海外にいたので実感はなかった)
2011年高校復学
・重松象平、サトウオオキを情熱大陸で目にし、ドイツ帰国直後だったこともあり、"グローバルなデザイナー”像に憧れを持つ。
・"作りたい自分”と”作れない自分”のジレンマに悩む。
→進路をギリギリまで、国際教養学部か、建築学科で悩んでいた
 
2012年クリスマスボウルでアメフト高校日本一に(オタク1:マッチョ9)
・近代主義的な思想に基づいた実践がある種の成功を収める。
 
2013年建築学科入学(オタク1:マッチョ5:グローバル4)
カポエラをやりたかったが、サークルがなかったのでブレイクダンスをかじる
ダイビングサークルにも入る。
・設計課題でも常に”あらかじめ機能的な設定をしない建築”に固執していた
それ故、製図の成績は全く良くなかった。
・卒業論文で、アンリ=ルフェーブルの”空間の生産”の概念を元に、東京の都市の一義性に対し問題提起を行った
 
2017年 同大学院入学、ドイツへ留学(オタク4:マッチョ3:グローバル3)
 
 

②何度も出てくる似たようなワード、フレーズを”キーワード”として抽出

 
身体が回ったり、飛んだり、浮いたりする体験(飛び降り、木登り、アメフト、ブレイクダンス、ダイビングなど、身体をフルに使う体験をずっとしてきたことが大きい)
    →映画でいうと、スパイダーマンが近い
    →非常に洗練された、アート作品としても質の高い遊具、大人も使う遊具のデザインなどを作ってみたい。
・都市の中で、何か今までに見たことのないものを発見する瞬間、またはそれを探している体験。宝探し。
    →誰も入れない場所にこっそり入ったときの快感。屋上に登る快感。
ゲームで新しいステージに来たときの、どこに何があるのだろう、というワクワク
・作ったものがどのように人々に影響を及ぼすか予想ができない、一種の社会実験的作品
 
キーワード:飛び降りる、遊び、ゲーム、情報技術、秘密基地、アメフト(スポーツ/運動)、身体、社会実験
 

③そのキーワードを持って、グーグルや図書館をひたすら漁りまくる

僕は、半年くらい漁り続け、このようなリストが出来上がりました。
 
  • 非近代的建築計画(非目的主義・非機能主義)
  • 日本の郊外の都市空間の単調性について
  • アンリ=ルフェーブルの”空間の生産”
  • シチュアシオニスト
  • ヨハン・ホイジンガ「ホモ・ルーデンス」(遊びの哲学)
  • ロジェ・カイヨワ「遊びと人間」
  • ゲーミフィケーション
  • 身体性・バーチャリティ・身体拡張
 
※これ以上に大量の本やネットの記事があるのですが、ここでは割愛します。
 
仮説的なコンセプト
→自らの多面性、多重人格を生かし、積極的ニヒリズムのその先の思想を元に、"環境"の遊戯性・多義性(ユーモア)を向上させる為のハッカーがコンセプトか…?
 
その際、自らの享楽としてゲームを始めとした情報技術が、一義的な都市空間に、仮想現実という形で他の解釈を許容した経験がある為、仮想/現実の主従関係・区別が曖昧になっていく現代において、情報技術を応用した現実空間への介入が起こせないか考えている?
 
※これをやっているときは、常に①の欲望年表をスマホで見直しながら行うと、いいかもしれません。
グーグルと図書館の併用をお勧めするのは、図書館だと隣に置いてある思わぬ本が実は重要だった、という、自分の考えた検索ワードだけではたどり着けない分野に行ける可能性があるからです。
 

④漁った情報から、1~3つの自分のコンセプト、を構築して行く

 
自分は、退屈な現代都市を、内に閉じた遊び(ゲームをする、友達の中だけでの遊びを開発する、RPGツクールでゲームを作る)を作ることで逃亡しようとするオタク。そこに、体育会で後天的に培った、努力すれば人は動かせる、というマッチョ思想、外に向かっていこう、社会と関わっていこう、というグローバル人材的思考が重なっている。スターウォーズが好きなのはこの為。(ある種のイキリオタク)
それ故、内向的な現状のファンタジー作品、ゲームではなく、物質として立ち現れる建築に学部時は向かっていった。その後、大学4年あたりに現状のゲーム業界やVR業界がどんどん現実空間に浸透していく流れを感じ取ったので、今はゲーム業界にまずは行こうとしている。
 
  1. 経済の仕組みや法規制、都市空間の慣習をハックし、実装は小さなモノスケールや非常に具体的なゲームなどに落とし込み、幼少期の自分のような思いをしている人(大人子供問わず)に都市で遊ぶ体験を与えたい。
  2. 余暇/労働という二分法を問いたい。労働のゲーミフィケーション
  3. 現状存在する、Web系UXデザイナーの、さらに体験に対しての物理的解像度が高いデザインをしたい。どのような身体の動きをして、何を見て、何を触れるのか、レベルまでデザイン。
 
 

⑤現代で、自分と似たようなコンセプトで、まだ生きていて、できるだけ世代の近い、世界的にうまく行っている人を見つける

どんな人達かな?→ハイパーイキリオタクand/or領域横断しつつ、それぞれの領域で、実装レベルまで自ら関わりながらプロダクトを生産している人たち(=現代のルネサンスマン)
 
  • Chris Milk(VRアートディレクター/音楽PV製作者出身)
  • Elon Musk(イキリオタク、中二病界の頂点。エンジニア/デザイナー/起業家) 
  • 落合陽一(ホログラム研究者/バーチャルリアリティ/メディアアーティスト/大学教授) 
  • 藤井直孝(VR研究者/起業家) 
  • Tofu Beats(出自はオタクだが、今はポップミュージックを作っている点) 
  • 任天堂岩田社長(エンジニア出身の経営者)
  • バンクシー(ハッカー的発言、立ち振る舞い、ある種のメインストリームに対しての反社会性)
 
この時に、「自分がなれるかどうか」、「この人達と自分が似てるなんて、おこがましい…」など考える必要はないです。あとで、自分とその人たちのギャップを考えたり、実際現実的に取れるステップを考える際に、方向が分かると迷わずに済む、と言う話です。
 
現代の人、と限定しているのは、あまりに時代が遠い人(僕の場合はダヴィンチなど)を選択してしまうと、社会的状況が違いすぎて、現代では不可能になっている行動も多くあり、「で、どうすればいいんだ…?」と迷ってしまうからです。
 
ダヴィンチが好きだから、俺もイタリアに行って彫刻を作る!と言う発想はズレている、と言う話です。
 
リストアップした人たちは、Wikipediaでどんな経歴の人かを確認したり、ツイッターでフォローしたり、講演会に行ってみたり、実際に会ったりすることも可能かもしれません。とにかく、目を離さないでおきましょう。
ここまでできれば、後は自分が彼らに近づいているか、遠ざかっているか、で自分の普段の行動を観察したり、
④で作ったコンセプトの中で、どれがより優先順位が高いかを、色々な実践を通して変更させていけばいいだけです。 つまり、あとは気合です。
 
頑張っていきましょう。