エッフェソイヤ!

建築のバックグラウンドから、次世代の建築を作るにはどうすればいいか考えているデザイン系院生が、建築/ゲーム/XR/UXデザイン/シチュアシオニスト/バク転/カポエラ/パルクール/筋トレ/クラブカルチャーについて幅広く語ります。

建築大学院生が、風来のシレンのスルメ度合いを熱弁する

今回は、僕が小学校の頃に一時期一日3-4時間はプレイした、チュンソフト(現在はスパイク・チュンソフト)開発の、N64版「風来のシレン2」について語ろうと思います。

建築学科に入り、設計課題をやったり、ゲームを作ったり、インターンをしたりして、半分”作る側"の人の目線を獲得した後に、あの面白かったゲームがなぜ面白いのか、
少し大人になって得た知識や経験と照らし合わせながら、分析してみたいと思います。
 
完全に趣味の記事なので、正直、ライフハック!のような役に立つ情報はあまり無いと思います。申し訳ありません。
もしかしたら、建築、ゲーム、UXデザインなど”人の体験を設計する"方には、どのようなモノが”ハマる”を生み出せるのか、という観点から有用かもしれません。
不思議のダンジョン 風来のシレン2 鬼襲来!シレン城!

不思議のダンジョン 風来のシレン2 鬼襲来!シレン城!

 

 

 

 

 

「何度も挑戦、何度も楽しい」

スルメゲームとは、オタク界隈のスラングで、"スルメのように、噛めば噛むほど味が出て行くゲーム"という意味です。
風来のシレン2は、そのスルメ度合いが尋常ではありません。
Amazonのサイトでも、18年前のゲームなのに発売当初の倍以上の値段がついている名作です。


どのようなゲームかは、上の動画を見てもらえると感じがつかめるかと思います。(4:00~)
基本的には、将棋のように、自分1マス動けば、相手(全モンスター)も1マス動く、というターン制のRPG(ローグライクRPG)です。
しかし、この説明と、この序盤の動画だけだと、

いや、ドラクエとかマリオの方が面白くない…?

と思ってしまいます。そこがこのゲームの唯一の欠点です。
僕も、購入してすぐは、

ジャンプもできないし、ビームもミサイルも無いし、つまらんなこのゲーム。ドンキーコング64やろっと。
※ジャンプ、ビーム、ミサイルなどは、万国共通で小学生男子が反応するものだと思っています。

と思い、しばらく放っておいていました。

www.youtube.com

 

しかし、このCMの動画で「何度も挑戦、何度も楽しい」と言われているように、このゲームは、ハマると少なくとも3年、長い人は10年単位で遊べる、超スルメゲームなのです。(ドンキーコング64はまた別の機会に紹介しますが、これも別の意味で名作です。)

ドンキーコング64 [WiiUで遊べるNINTENDO64ソフト][オンラインコード]

ドンキーコング64 [WiiUで遊べるNINTENDO64ソフト][オンラインコード]

 

 

運と実力が占めるファクターが、絶妙

 
細かい部分の面白さや、思い出を語ればキリが無いので、このゲームの一番核の面白さをまず説明します。

それは、プレイヤーがコントロールできないランダム性と、コントロールできる部分のバランスが抜群に良い、という点です。

将棋でいう盤面に当たる”ダンジョン"は、プログラムにより毎回ランダム生成されます。
そのため、同じダンジョンに挑んでも、前と同じ形になることは二度とありません。二度と、です。
また、モンスターを倒すのに役立つ様々なアイテムも、場所を含めランダムに出現します。(ダンジョンにより制限はあります。)

なので、ゲーム序盤でいきなり最強クラスのアイテムが、すぐ目の前に現れたり、
逆に、進めども進めども弱いアイテムしか出てこない、という場合もあります。
また、欲しいアイテムがすぐそこまで見えているのに、たまたま水に阻まれたり、強いモンスターのそばに配置してあったり…
剣や盾はたくさん手に入るのに、回復アイテムが全く出現せず、最強装備のままゲームオーバーになったり…

そして、一度ゲームオーバーになってしまえば、ドラクエなどとは異なり、レベルや持ち物が全て0に戻ります
なので、ひたすら鍛えて、ランダム性を気にせずにゴリ押しして行く、というのは設計上不可能です。

突然ですが、これって、人生に似ていませんか…?

多くのゲームは、大体どのタイミングで何が出現するか、が固定されており、それを覚えてしまえば最初は難しくとも、徐々に目をつぶってでもプレーができるようになります。
しかし、風来のシレンのようなゲームは、ランダムに変わる状況に対して、自分の持ちアイテムをうまく組み合わせたり、運用していかなければなりません。
そして、一つのアイテムにも、

・モンスターを倒すための武器としての用途
・武器を強化する素材としての用途
・一部のアイテムは、食料としての用途など

様々な組み合わせ、使い方がプレイヤーに任されています

実生活でも、何が起こるか予測できることはものすごく少なく、自分がある目的で行った行動が、実は別のことに役に立ったり、逆に障害になったり、その連続です。
そして、新しい環境に身を置けば、今までやってきたことが全く役に立たない、ということは、多くあります。

いい遊び(=ゲーム)は、偶然と実力のバランスが、現実よりは複雑ではなく、しかし予測するのが難しい、という絶妙なものが多いと考えられます。

例えば、19世紀半ばの中国で発明され、今も遊ばれ続けている麻雀も、プレイヤーに配られる牌はランダムですが、
他のプレイヤーの心理状況や、手を予想し、適切なタイミングで自分の牌を回していく部分に、腕の見せどころがあります。



僕は麻雀はオンラインで数回やったのみなので、詳しくは知りませんが、
友達の話を聞くと、"あのタイミングで切っておけばよかった..."という判断ミスの後悔をよくするようで、
それ故もう一度挑戦したくなり、徹夜してでも飽きないゲームなのだろうな、と感じます。

風来のシレンでも、出現するアイテム(麻雀でいう牌)が数十〜数百あり、何度も危機的な状況に陥る中で、

"今、このアイテムを使うべきか、それとも後にとっておくべきか..."

と悩む場面が何度も出て来ます。
そして、後に回しておこう、と思ったら、すぐにゲームオーバーになったり、
すぐに使おう、と思い使ったら、予想通り後で"使わなければよかった..."と思ったり、という場面が何度も起きます。

これ、二回目ですが、人生に似ていると思います。

しかし、出現するモンスターの強さは、階層に比例して強くなって行ったり、階層によって微妙に出現率が調整してあったりします。
なので、非常に上手な人は、どのような"引き"でもある程度の確率で勝っていくことができます。
しかし、いくら上手な人でも、偶然が重なり負ける確率は、0にはなりません。
 
ベテランプレイヤーが偶然の重なりによって詰む動画です。ゲームを詳しく知らなくても「ああ、なんかボコボコにされているな」というのは伝わると思います。

この、ある規則性を持ったランダムというシステム設計が、小学生の僕の心を掴んで離しませんでした。
 
ポケモンなどの有名なゲームも、ポケモン出現率や、モンスターボールでの捕獲可能性など、ランダム性を含んでいます。
ただ、風来のシレンのランダム性は、同時期の他のゲームより群を抜いて複雑であった、と言えると思います。

逆に、ランダム性がかなり低く、純粋なプレイヤーの腕の勝負、というスポーツのようなゲームも多く存在します。
グランツーリスモなどの、リアルさを志向したレースゲームや、FIFAなどのサッカーゲーム、スマブラ・ストリートファイターなどの格闘ゲームは、これに当たります。
 

こういったゲームでは、上手い人は何回やっても勝ち続け、負ける人は負けます。
僕は、もともと運動神経があまり良くなく、"反応スピード”が求められるゲームが下手だったので、こういうゲームはあまり好きではありませんでした。

しかし、風来のシレンの場合、そもそも一人ゲームなので、”誰かに負け続ける"という悔しい思いというよりは、自分との闘いになります。
その点も、当時インドアオタクだった小学生の僕に響いた点でした。
 

奥へ奥へと行く、探索の楽しさ


風来のシレンのダンジョンは、”階層"で分かれています。
各階層には、階段が一つだけ、ランダムに配置されており、その階段を降りる/登っていき、階数に達したらクリア、というシステムです。
この、ダンジョンの奥へ、奥へと入って行くシステム設計も、当時秘密基地や探検が趣味だった小学生の僕に響きました。
 
現実の街は、そう数十分おきに何か新しい風景が開けたりすることはありません。
しかし、このゲームは毎分何が起こるか全く予想ができず、どんどん未開の地を切り開いていける感覚があります。

探索好きのご褒美として、ゲームクリア後、「最果てへの道」というダンジョンが出現します。
 
通常のステージが10~20階層でクリアとなるのに対して、最果ての道は、99Fまでたどり着かないとクリアしたことになりません。
そして、出現するモンスターも本編よりはるかに強力です。
もちろん、99階でゲームオーバーになれば、また何も持たない状態、レベル1から再スタートです。

探索好きとしては、挑戦せずにはいられないダンジョンだと思います。

小学生では、序盤であっさりと負け続け、中学生になった後に、何回か再チャレンジしましたが、僕は未だにクリアできていません。
老後に、老人ホームで僕らの世代のゲームがプレイできるようになると思うので、その際に思う存分攻略していきたいと思っています。

www.youtube.com

2018年現在でも、小規模ですがYoutubeでこのステージのタイムアタックに挑戦している人がいるようです。
普通の人なら、10階層分進むのに1時間以上かかってしまうところを、99階全てを1時間以内にクリアする、という神の境地の人々です。


異様に作り込まれた世界観

 
ダンジョン以外にも、それを支えるアイテムの種類も、数百種類存在し、
敵モンスターの種類も、同じく百近くは存在します。
 
そして、全てのアイテム、モンスターに、ジョークを交えた2-3文の説明文が書いてあります。(趣味は何か、普段は何をしているか、モンスターのシリーズものの日記など)
 
正直にいって、この作り込みは異様だと思います。開発者の人が何を考えていたのか、少し知りたいくらいです。
 

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武器をコンプリートした状態

 
そして、武器を完全コンプリートするだけでなく、このゲームではクリア後の特典として”モンスターの動物園”にモンスターを捕まえてくる、
というタスクが発生します。
 
ポケモンと同じボリューム感が、クリア後の”特典"として付加されているのです。尋常ではありません。
モンスターの動物園以外にも、先ほどの最果てへの道、他にも3つほど本編よりはるかにボリュームのあり、難易度が高いダンジョンが、ストーリークリア後に待ち構えています。

つまり、このゲームを完全コンプリートするのは、実質不可能に近いです。掘っても掘っても、やるべきことが増えていく。
それ故、「なんども挑戦、なんども楽しい」ということなのです。
 
(この、"探索の楽しさ"は、少し前の記事で説明した、"空間の毛深さ"とも実は繋がっているのではないか、と思っています。)

 

www.effesoysoya.com

 


最近はいいスルメゲームが少なく、オタクとして少し悲しい

最近のスマートフォンゲームは、短期的に収益を獲得して行くモデルなので、一つのゲームにプレイヤーが何年も熱中している必要はないです。
というより、僕が実際に何個かのゲームをプレーしてみて抱いた印象は、
ゲームシステムや世界観自体の面白さ・作り込みでプレイヤーを引き止めるのではなく、
ゲームシステムや世界観はほぼ既存作品の焼き増しでよく、定期的に出現するレア課金アイテムの出現率を操作することでプレイヤーを引き止めている
ように感じます。
 
〇〇出現率増大中!!〇〇石ボーナスキャンペーン実施中!!
のようなお知らせが出てくるタイプのゲームです。

これは、スマホゲームと、据え置き型ゲームのそもそもの売られ方の違いや、10年前と今の娯楽のあり方の変化など、根が深い問題なので、
ゲームメーカーの人々が一概に悪い!ゲーム業界は金に魂を売った!と糾弾することも難しいです。

実際に、自分がインターンなどで話したゲーム開発者の方たちは、ものすごく熱い想いでゲームを作られているし、風来のシレンが好きだ、という方も何人かいらっしゃいました。
 
今後、ゲーム業界に風来のシレンのようなスルメゲームが増えて行くことを、1オタクとしては願っています。
 
願わくば、現実の世界も、勝つ人が勝ち、負ける人が負ける、というものでなく、偶然の要素で大逆転が起こったり、昨日と今日で全く新しい風景が開けていたり、やればやるほどどんどん面白くなって行く、スルメゲーのような世界になれば、と思います。
 
お金と時間に余裕ができたら、風来のシレン最新版をぜひやってみようと思います。 
不思議のダンジョン 風来のシレン5 plus フォーチュンタワーと運命のダイス - PSVita

不思議のダンジョン 風来のシレン5 plus フォーチュンタワーと運命のダイス - PSVita

 

 

ああ、でもメタルギアもやりたい、バイオハザードもやりたい、スプラトゥーンも結局できてない...辛い...